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体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その16

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体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その15 の続きです。初めての方は その1 からどうぞ。

 こうなったらもう自分の体の心配をしている場合じゃない。俺は危険を顧みず体を起こすと姉のいる場所へ猛ダッシュを開始する。姉はまだ先程と同じ場所に立っていて、手にしたマシンガンの安全装置を外そうと必死にいじくりまわしていた。今の俺の位置からでも姉が泣きながら体を震わせているのが見える。

俺が姿を見せたにも関わらず映写室の男の銃撃はまだ部長を追っていた。ちらりと部長の方向を見ると、彼女は手にしたスタンガンをまるで本物の拳銃の様に見せかけて映写室の男の注意を自分に引きつけていた。さすが頭が良い。

俺は中央通路に辿りつくと姉の元へ一直線に駆け寄る。その一歩一歩がとても長い時間の様に感じる。映写室の男が俺の存在に気づき、その銃口で俺を狙い始める。とにかく今は前へ進むしかない。足を止めて映写室の男と打ち合うなんてのは自殺行為だ。姉の元へ辿り着いたその後どうするか俺は考えていなかった。

案内嬢「ちょっと、何をしているの!?」

劇場入り口から案内嬢の声が響く。彼女は映写室に向かって手にした拳銃を発砲するが、映写室の男はそれでも狙いを変えず俺を狙い続けていた。姉の元へ辿り着くと俺は姉の体を掴んでそのまま一緒に地面へと倒れこみ、俺の体が姉の体に完全に覆い被さる体勢となる。

その瞬間、俺は背中にまるでプロボクサーのパンチを受けたような強烈な痛みを感じた。ぼんやりとした頭で自分が銃で射たれた事を理解する。俺が上になっていたおかげで、姉ちゃんを守る事ができたから良しとしよう。

案内嬢が映写室の割れた窓から手榴弾を投げ込み、その爆発と共に男の銃撃が止まる。俺の倒れている位置からでもその爆風を感じる事ができた。俺の体からは血が大量に流れ出している。

俺「姉ちゃん…?」

返事は無い。

顔を上げて映写室の方向を見ると、壁には大きな穴が開き周囲の座席がめちゃくちゃになって無数の破片がちらばっていた。幼馴染の友人と部長は両方とも姿を消していた。俺の出血は止まる様子を見せない。

劇場の入り口から車椅子に乗った男が三人侵入して来て、案内嬢はそれを撃退しようと男達に突撃をする。しかし彼女が男達の一人を捉えた所で、別の一人に足を取られて彼女は床へと押し倒されてしまう。残った一人と自由に動ける様になった最初の一人は俺の方へ向かって移動を開始し、案内嬢を取り押さえていた男は彼女の頭めがけて拳銃を発射した。

ここまでか… 俺の意識は遠くなりかけていた。

俺「姉ちゃん…?」

俺「姉ちゃん!」

車椅子の暗殺者達が俺達二人に襲いかかろうとしたその瞬間、最前列の座席の影から突如として部長が姿を表した。彼女の手にはスタンガンが握られている。

部長「しばらく眠ってて。」

そう言うと部長は素早い動作で背後から三人の暗殺者達の首筋にスタンガンを当てて電撃をくらわす。彼らが気を失うと同時に俺も意識を失った。

……

……

 俺は機械の並んだ真っ白な部屋で目を覚ました。ちらりと横を見ると案内嬢がベッドの横に座っており、彼女の顔の半分は包帯で覆われていた。

案内嬢「お久しぶり。」

その言葉はゆっくりで、ほんの少しだけ呂律が回っていなかった。だがビジネスライクな口調は変わっていない。

俺「姉ちゃんはどこだ?」

案内嬢がくすりと笑う。

案内嬢「無事よ。あなたの体が良い盾になったもの。」

そう言ってまた煙草を吸い始める。おいおい、ここは病院じゃないのか? それに頭を撃たれたのに良く生きているなこの人。

案内嬢「念のために言っておくと、あなたは一週間以上も眠っていたのよ。」

俺「俺の姉ちゃんはどこだ?」

案内嬢「またお姉さん? こちらの分析ではあなたはお姉さんの事を嫌っていたはずなんだけど、どういう風の吹き回し?」

天井を見上げ様として頭を動かすと体がズキリと痛んだ。

案内嬢「お姉さんは近くの病室で療養中よ。大した事はないけど少し怪我をしていたからね。」

俺「それで他の二人は?」

案内嬢は首を振る。

案内嬢「無口な方はまったくの無傷よ。あの時半径100メートル以内に居た人で怪我しなかったのは彼女だけだったわ。そしてメイド服を来ていたもう一人は…」

俺は案内嬢の方を見る。

案内嬢「彼女が今どうしているのか私達には解らないわ。」

俺のベッドの横には点滴薬が設置されていてモルヒネが自動的に投与されていたが、あまり効果が無いらしく首から下は焼けるような激痛が襲っていた。

俺「行方不明だって言うのか?」

俺が力のこもらぬ声で尋ねると、案内嬢はうんざりした様子でため息をつく。

案内嬢「”社交クラブ” があの劇場の事を知っていたはずが無いのよ。あそこは私達の組織の拠点の一つだもの。もちろん、あなた達の後をつけていたって可能性も否定できないけれど、それとは別にもう一つの可能性が…」

俺は冷たい目で案内嬢をにらみつける。

俺「何の可能性だって?」

案内嬢「あなたのお友達が彼らのスパイである可能性よ。」

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その17 に続く


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