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体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その11

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体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その10 の続きです。初めての方は その1 からどうぞ。

 もし部長にこれ以上の協力を求めるなら、俺達は彼女を信頼して全てを話さなければならないだろう。俺の隣の友人は不安そうな顔をしていたが、俺は慎重に俺達二人に今日起こった出来事を全て話した。姉が帰宅した所から始めて、その姉がいなくなってしまった事や、俺達が暗殺者を三人殺した事やブティックで強盗をした事まで話した。

俺が話を終えると部長は、

部長「わかった。」

とだけ言ってモニターの方向へと顔を戻す。

俺「それで… これからどうすれば良いと思う?」

俺は自分自身と部長の両方に尋ねる。

部長「車椅子の暗殺者なんて聞いた事がない。少し調べてみるからちょっと待ってて。」

部長は Google のページを開くと「車椅子の暗殺者」と入力して検索を始める。ハッカーも調べ物するとき Google を使ったりするんだ… と俺は妙な所で感心する。

部長「”Infinite Jest (終わらぬ戯れ)” という小説に車椅子の暗殺者が登場する。ウィキペディアによるとこの作品のタイトルはシェイクスピアの “ハムレット” の中の台詞から取ったものらしい。」

俺は少し顔をしかめてこう言う。

俺「ウィキペディアより他を調べた方が良いと思うけど。」

部長はうなづくと、Google で今度は「車椅子の暗殺者に襲われた時に助かる方法」というワードで検索を始めた。

友人「ばかみたい! 暗殺者から身を守る方法を Google で調べるなんて!」

友人が叫ぶ。部長は再び感情のこもらぬ顔でうなづくと、今度はこれまでに見たこともないようなプログラムを起動させた。

部長「それなら闇サイトを調べた方が良いかも知れない。そこなら何か情報が見つかるかも。」

そして数分後、俺達は暗殺者を雇うための求人サイトの様なWEBページを見ていた。

友人「こんなものがインターネット上にあるなんて…」

部長「闇サイト上になら存在する。匿名化された通信によって情報をやり取りしている。」

俺「でも車椅子の暗殺者の情報は少しも見当たらないぜ。」

俺は少し焦り始めていた。

部長「ええ、でもこれを見て。」

部長はそう言うと、WEBページの仕事募集欄の一つを指さす。そこには「当方仕事募集中。但しエレベーターのない高層ビルでの仕事は不可」と書かれていた。

部長「見るからに車椅子の暗殺者っぽい内容。」

そう言った後、少し考えて続ける。

部長「情報を引き出すために、彼らを一人雇うフリをしてみるというのはどう?」

俺「それは最後の手段にとっておこう。」

俺は答える。

俺「他に情報が得られそうなサイトは無いのか?」

部長をまた少し考えた後、再び普通のWEBブラウザに戻って調べ物を続ける。

部長「私が知る限り、山本ゴムはアメリカ国防総省と密接な関係がある。山本ゴムが今回の件に関わっているなら、アメリカ国防総省も今回の件に関わっている可能性が高い。そこで私に一つ考えがある。」

部長はそう言うと、アメリカの外交機密や諜報機密の漏洩文書と称するWEBページを俺達に見せる。

部長「これは日本国内で活動するアメリカの工作員のリスト。このリストが工作員の全てを網羅しているという訳ではないだろうけど、もしかしたら誰か思い当たる人物がいるかも知れない。たとえばあなたの後をつけていた男とか。だから特に顔写真を注意してよく見て欲しい。もしこの中の工作員が一人でも関わっていたのなら、その人にコンタクトをとって情報を聞き出す事ができるかも知れない。」

望みは薄かったが、俺はとにかくリストに目を通す事にした。自分をおとりにして暗殺者をおびき出すなんて方法よりはまだマシだろう。俺はページをスクロールさせて顔写真に目を通すが、どれも見た事ない顔ばかりだった。

しかしその時突然、

俺「なんてこった! この人は…」

俺は信じられないという表情で一つの顔写真を見ていた。それは俺の家の近所の映画館で最近働き始めた案内嬢だった。少し寂しげででもそこがかわいらしいと思わせる独身女性。リストに書かれてる名前は映画館で働いてる時の彼女の名前とは違っていた。彼女がアメリカ国防総省の工作員だって!? だがこうなると彼女が俺に接近してきたのが偶然とは思えない。今回の件に何らかの形で関わっている事は間違いないだろう。

時間を確認するとまだ夜もそんなに深くない、案内嬢はまだ映画館で働いているはずだ。部長と友人に事情を説明してこれから映画館に行く事を提案すると、もちろん友人は一緒に付いてくると言ったが部長は、

部長「わかった。USBメモリを忘れずに持って行って。」

とだけ言った。だが今やここで一人で残る方が危険だ。俺がその事を説明すると部長はうなづいて答える。

部長「一理ある。じゃあ私も行く。」

俺の隣の友人は何も言わずに不満そうな顔で俺を見ていた。部長はこの友人からガンマ線の様に発せられている嫌悪感に気がついているんだろうか… 多分気がついてないんだろうな。

部屋から出る時、部長はスタンガンを取り出して自分のスカートの腰の部分に取り付ける。スタンガンは伸縮性のコードで固定されており、いざという時には瞬時に使用する事ができる様になっていた。

部長「正当防衛。」

と部長が言うと、

友人「でしょうね。」

と友人が皮肉を込めて言った。

部長は部屋を埋め尽くしているコンピューターの電源を切らずにそのまま部屋を出る。この部屋の電気代は毎月すごい事になっているんだろうな、と俺は思った。

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その12 に続く


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